リファラル採用で入社したけど辞めたいとき、確認することと伝えること

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辞めたい気持ちが固まっても、伝える相手が1人増えるのがリファラル入社です。上長には言えても、誘ってくれた友人の顔が浮かんで止まる。転職先が決まっているのに、この一言のために動けないという状態は、実際によく起きます。
辞めづらさは、2種類に分けると扱いやすくなります。
- 確認すれば整理できること — 会社から紹介者へ共有されるのか、紹介者の評価に影響するのか、報酬の返還はあるのか
- 自分で伝えること — 誰に先に伝えるか、紹介者へどう切り出すか、理由をどう伝えるか
前半で確認のしかたを、後半で伝え方を、文面まで含めて扱います。
辞めるべきかどうかの判断そのものは、この記事では扱いません。また、ここに書くのは一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の事情がある場合は、後半の相談窓口を使ってください。
辞めづらさは、伝える相手が1人多いことから来る
通常の退職で意思を伝える相手は、直属の上長と人事です。会社と自分の2者で完結します。
リファラル入社では、ここに紹介してくれた人が加わります。この人は評価者でも人事でもなく、社内にいる友人や元同僚です。退職の話を「業務上の報告」として処理できる相手ではありません。相手の反応が読めないぶん、切り出す難易度が上がります。
そこに、通常の転職では出てこない不安が3つ乗ります。
- 自分の口から言う前に、会社経由で伝わってしまうのではないか
- 自分が辞めることで、紹介者の社内での立場や評価に影響が出るのではないか
- 紹介者が受け取った報酬を、返すことになるのではないか
3つとも、確認すれば整理できるものです。順に見ていきます。
会社は、紹介者に退職を伝えるのか
「人事から友人に伝わって、自分の口から言う前に知られるのでは?」
会社が紹介者へ退職の情報を共有するかどうかは、会社の運用や、紹介者との関係によります。決まった扱いがあるわけではありません。
そのうえで、自分から伝えたいのであれば、先に希望を出しておくことができます。上長や人事へ退職を伝えるその場で、「〇〇さんには自分から伝えたいので、それまで共有を控えてもらえますか」と頼む形です。あわせて、どこまで誰に共有されるのかも確認しておくと、伝える順番を自分で決められます。
紹介者の評価は下がるのか
「自分が辞めたら、紹介してくれた友人の評価に響くのでは?」
紹介と人事評価をどう扱うかは、会社の制度によって違います。推測で悩むより、自社の制度を確認するほうが早く整理できます。
確認できるのは、次の3か所です。
- リファラル採用規程(社内ポータルや人事システムに置かれていることが多い)
- 制度の説明資料(社内向けの募集告知や案内)
- 人事への直接の質問
規程を開いたら、次の3点を探してください。
- 紹介した社員の人事評価に関する条項があるか
- 報酬の支給条件に、在籍期間の定めがあるか
- 返還に関する条項があるか
辞める意思を伝える前でも、制度についての質問なら問題なくできます。「リファラルで入社した人が辞めた場合、紹介した側に何か影響はありますか」という聞き方であれば、自分の状況を明かさずに確認できます。
制度としてどう設計されるべきかは、規程の作り方の記事で扱っています。
紹介報酬はどうなるのか
「友人が受け取った紹介報酬、自分が辞めたら返すことになる?」
ここは当事者にとって一番不安な部分だと思います。整理しておきます。
まず、報酬を受け取ったのは紹介した側で、紹介された側ではありません。 紹介報酬は紹介者に支給される設計が多く、その場合、入社した本人が返還義務を負う建て付けにはなっていません。ただし制度は会社ごとに違うので、自社の規程や入社時の書類は確認してください。
そのうえで、紹介者の側に何が起きるかは、会社が報酬をいつ払う設計にしているかで変わります。
会社の支給設計 | 自分が辞めたときに起きること |
|---|---|
入社時に全額支給済み | 支給済みの報酬に返還を求めるかは規程次第。返還条項の有効性には後述のリスクがある |
在籍期間の経過後に支給 | 支給前に退職した場合、紹介者に報酬が入らない結果になり得る |
分割支給 | 支給済みの分は1行目、未支給の分は2行目と同じ扱いになる |
返還を求められた場合の考え方です。社内制度として自社の従業員に支払う紹介報酬は、賃金として扱われる場合があります。ただし、賃金にあたるかどうかは制度の設計や支給の実態によって判断が変わるため、会社が呼び方や処理方法を選べば決まる、という性質のものではありません。
賃金として扱われる場合、労働基準法が関わってきます。同法は、労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定したりする契約を禁じており(16条)、賃金は全額を支払わなければならないとも定めています(24条)。すでに支払われた賃金の返還を強制する条項は、これらとの関係で無効と判断されるリスクがあると考えられています。
在籍期間の経過を支給条件にしている会社で、その期間の前に辞める場合は、返還ではなく「支給されない」という結果になります。法的な争いにはなりにくい代わりに、紹介者からすると受け取れるはずだったものが入りません。ここが気になるなら、伝えるときに一言触れておくほうが誠実です。
会社側から見た報酬設計の考え方は報酬相場の記事、法務・税務の整理は報酬は違法なのかを扱った記事にあります。

ここで書いた内容は一般的な整理であり、法的助言ではありません。実際に返還を求められた場合は、後半の相談窓口を使ってください。
辞める自由はどうなっているか
制度や人間関係とは別に、法律上の建て付けも押さえておきます。
民法第627条は、各当事者がいつでも解約の申入れをすることができ、申入れの日から2週間を経過することによって雇用が終了すると定めています。紹介経由の入社を除く、といった例外はありません。
ただし、この2週間のルールは期間の定めのない雇用契約が前提です。 契約社員など有期雇用の場合は扱いが異なるので、自分の雇用契約がどちらかを、雇用契約書や労働条件通知書で確認してください。
連合(日本労働組合総連合会)の労働相談Q&Aでは、一般的な違いとして、「退職願」は退職に会社の承諾が必要と解釈される可能性があるのに対し、「退職届」なら承諾は不要で、提出から2週間の経過により雇用関係が終了する、と整理されています。
実際には、書類の名称だけで法的な効果が決まるわけではなく、書かれている内容や意思表示の中身も踏まえて判断されます。それでも、どちらの言葉を選ぶかで受け取られ方が変わることは知っておいて損はありません。
実務では、就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」といった定めがある会社が多くあります。引き継ぎの都合もあるので、その期間に沿って進めるほうが穏当です。これは会社との関係の話であって、辞められるかどうかの話ではありません。
なお、厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、2024年の離職率は14.2%でした。紹介経由の入社者について離職確率が低いことを示した研究もありますが、これは全体の傾向で、個々の人が辞めないという意味ではありません。
辞める前に、切り分けておきたいこと
辞めると決めている場合は、この節を飛ばして構いません。まだ迷っている段階なら、「合わない」の中身を分けておくと判断しやすくなります。会社そのものが合わないのか、いまの配属や業務が合わないのか、特定の人との関係がつらいのか。後ろの2つは、異動や担当変更で状況が変わる可能性があります。
紹介で入った会社の場合、「相談したら紹介者に伝わるのでは」と考えて、社内で誰にも言わないまま辞める判断に進んでしまうことがあります。誰に共有されるかが心配なら、相談の最初に「紹介者にはまだ共有しないでほしい」と希望を伝え、どこまで共有されるのかを確認してください。
相談した結果として辞める判断になっても、何も問題ありません。判断の材料を増やしてから決める、という意味です。
誰に、どの順番で伝えるか
ここからが実務です。順番を間違えると、関係が壊れやすくなります。
- STEP1辞めたい理由を整理する会社そのもの・いまの配属・特定の人との関係のどれが理由かを切り分けておく
- STEP2直属の上長に伝える正式な意思はここから。希望日と引き継ぎの考えを添える。紹介者が上長の場合はこの段で兼ねる
- STEP3間を空けずに、紹介者へ自分から伝える手段は普段その人とやり取りしている方法で構わない。人づてに知られる前に伝えることが軸
- STEP4退職届を出し、引き継ぎを進める就業規則の期間に沿って進めると穏当。有給休暇の残日数もこの段階で確認する
正式な退職の意思は、まず直属の上長へ伝えるのが整理しやすい形です。 紹介者に先に打ち明けると、紹介者が「知っていたのに黙っていた」立場に置かれることがあります。上長と紹介者が同じ部署なら、なおさらです。
例外もあります。紹介者が直属の上長である場合は、紹介者に伝えることが会社に伝えることになります。関係性によっては、先に紹介者へ相談するほうが自然なこともあります。ここは自分の状況で判断してください。
紹介者へは、会社に伝えたあと、できるだけ間を空けずに自分から伝えます。 手段は、普段その人とやり取りしている方法で構いません。対面や電話のほうが話しやすい関係ならそれで、普段メッセージ中心なら文章で切り出しても問題ありません。大事なのは媒体ではなく、人づてに知られる前に自分から伝えることです。
切り出すときの文面
そのまま使える形にしました。自社の状況に合わせて調整してください。
お時間をいただきありがとうございます。退職を考えており、ご相談させてください。 〇月末での退職を希望しています。理由は〇〇で、社内で解決できるものではないと考えての判断です。 引き継ぎは、退職日までに終わるよう進めたいと考えています。
〇〇さん、少しお時間いただけますか。実は〇月末で退職することにしました。今日、上長にも伝えてきました。 〇〇さんに誘ってもらってこの会社に入れたことは、本当に感謝しています。そのうえで、自分のやりたいことを考えた結果の判断です。 もし〇〇さんに何か影響がありそうなら教えてください。落ち着いたら、改めてごはんに行かせてください。
上長へは1on1などの場で、紹介者へはその後できるだけ間を空けずに。〇〇は自社の状況に合わせて調整してください。あくまで一例です。
紹介者に伝えるときに外せないのは、次の3点です。
- 紹介してもらったこと自体への感謝を、先に言葉にする
- 辞める理由を、紹介者のせいに聞こえない形で伝える
- 相手の立場を気にかけている、と示す
言い方で変わること
同じ内容でも、伝え方で受け取られ方が変わります。
- 「辞めていいと思う?」と判断を委ねる
- 「あなたが紹介した会社が」と聞こえる言い方
- 人づてに伝わるまで黙っている
- 上長に伝えたあと、紹介者への連絡を先延ばしにする
- 決めたこととして、自分の言葉で伝える
- 「自分はこう感じて、こう判断した」と話す
- 人づてに知られる前に、自分から伝える
- 上長へ伝えたあと、間を空けずに紹介者へ
避けたいのは、紹介者に判断を委ねる形です。「辞めていいと思う?」と聞くと、相手に責任を持たせることになります。
理由については、不満を隠す必要はありません。会社に対して思うところがあるなら、それが事実です。ただ、「あなたが紹介した会社が悪かった」と聞こえる伝え方をすると、相手は「そんな会社に誘ってしまった」という後悔を抱えます。同じ内容でも、「自分はこう感じて、こう判断した」と自分の判断として話すほうが、紹介者に責任を背負わせずに済みます。
嘘の理由を用意する必要はありません。主語を自分に置く、という違いです。
辞めたあとの関係
「気まずくなって、連絡できなくなりそう」
関係がどうなるかは、相手の受け止め方にもよるので、こちらで決められる部分ばかりではありません。それでも、関係を残したいのであれば、「人づてに聞いた」「長く黙っていた」と感じさせないよう、自分から説明する機会をつくることはできます。
最終出社日までのあいだに一度きちんと話す時間を取る、退職後の連絡先を交換しておく、といったことです。同じ業界にいるなら、また仕事で関わる可能性もあります。
紹介した側でこの記事を読んでいる場合
「自分が誘った友人が、辞めたいと言ってきた」
この立場で読んでいる方もいると思います。受け止め方について、2点だけ書いておきます。
引き止める役を引き受けなくて構いません。 紹介は、会社と候補者が出会うきっかけを作る行為です。入社後にその人が働き続けるかどうかは、会社と本人のあいだの話であって、紹介した人が背負う筋合いのものではありません。
「相談してくれてよかった」と最初に返せると、関係は残ります。 辞めると打ち明けるほうは、たいてい何日も迷ってから口に出しています。その場で理由を問い詰めるより、話してくれたこと自体を受け止めるほうが、その後の関係に効きます。
紹介報酬について会社から返還を求められた場合は、この記事の「紹介報酬を返さないといけないのか」の節と、相談先を参照してください。
人事・採用担当の方へ:辞めづらさを作らないために
ここからは企業側の視点です。リファラル経由で入社した社員が「辞めたいけれど言い出せない」状態にあるのは、制度の設計で防げる部分があります。
1. 紹介と評価を切り離し、それを明文化する
紹介した社員の評価に、被紹介者の定着を紐づけないこと。そして、そう決めていることを規程や社内の説明に書いておくことです。書かれていなければ、社員は「たぶん影響する」と推測します。
2. 返還トラブルを避けるなら、在籍確認後の支給も検討する
支給済みの報酬について返還を求める設計より、一定期間の在籍を支給条件として、それを確認してから支払う方法は、返還の問題を起こしにくくする一案です。唯一の正解というわけではないので、自社の設計は弁護士等に確認してください。詳しくは規程の作り方にまとめました。
3. 「紹介者がいるから大丈夫」と考えない
紹介経由の入社者は、社内に相談相手がいるように見えます。ですが実際には、「紹介してくれた人にだけは言いにくい」という状態に置かれることがあります。会社が気づかないまま、本人が誰にも相談できずに退職の判断まで進んでしまう形です。
防ぐための具体策は3つです。
- 通常の1on1や人事面談を、紹介経由だからと省略しない
- 紹介者以外の相談先(メンター、人事の窓口など)を最初に伝えておく
- 紹介者に、被紹介者の定着の責任を負わせない
不採用の場面での気まずさへの対応は、次の記事で扱っています。

制度が形骸化する構造は4つの壁の記事にまとめました。
困ったときの相談先
会社との話し合いで解決しない場合や、返還を求められた場合の相談先です。
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省・各都道府県の労働局や労働基準監督署内)— 退職や労働条件のトラブル全般。予約不要・無料で相談できます
- 労働組合(社内にない場合は地域の合同労組)— 会社との交渉を代わりに行える場合があります
- 弁護士— 金銭の請求を受けている場合や、契約書の解釈が争点になる場合
まとめ
辞めづらさの中身は、確認すれば減るものと、伝え方で扱うものに分かれます。
確認すれば減るのは、紹介者に会社経由で伝わるのか、紹介者の評価に影響するのか、報酬の返還はどうなるのか、の3つです。会社の規程と、上長への一言で、いずれも事前に押さえられます。特に「自分から伝えたいので、それまで共有を控えてほしい」と頼んでおくと、伝える順番を自分で決められます。
伝え方で扱うのは、紹介してくれた人との関係です。まず上長へ、その後できるだけ間を空けずに自分から紹介者へ。感謝を先に置き、理由は自分を主語にする。
紹介者との関係を完全にコントロールすることはできません。相手がどう受け止めるかまでは決められないためです。ただ、「人づてに知った」「何も説明がなかった」という余計な行き違いは、自分から伝えることで減らせます。
リファラル採用の仕組みそのものは基礎ガイドに、紹介と選考の切り分けについては縁故採用との違いの記事にまとめています。
出典・参考
- 民法(e-Gov法令検索)第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第16条(賠償予定の禁止)・第24条(賃金の支払)
- 日本労働組合総連合会(連合)「労働相談Q&A 22.退職の自由」
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」(2024年の離職率)
- Burks, Cowgill, Hoffman, Housman「The Value of Hiring through Employee Referrals」Quarterly Journal of Economics, 2015

