リファラル採用とは?仕組み・他手法との違い・企業規模別の意味まで【基礎ガイド】

目次(タップで開閉)
- 1リファラル採用とは
- 言葉の意味と、日本での呼び方
- 縁故採用・コネ入社との違い
- 2データで見るリファラル採用の現在地
- 海外では、採用ソースの上位に定着している
- 3なぜ広まったのか
- 採用コストが企業の負担になっている
- 求人を出しても応募が来ない職種がある
- 転職が一定の規模で起きている
- 4リファラル採用の仕組みと流れ
- 紹介する社員に期待される役割
- 5制度の型は、ひとつではない
- 6他の採用手法との違い
- どう使い分けるか
- 7企業規模で変わる、リファラル採用の意味
- スタートアップ・中小企業にとって
- 大企業にとって
- 混同されやすい言葉の整理
- 8メリットは3つの視点で見る
- 9どこまで成果が出るものなのか
- 10デメリットと、つまずきやすいところ
- 11報酬はどう考えるか
- 12よくある3つの誤解
- 13向いている会社・向いていない会社
- 始められる状態か、確かめる
- 14よくある質問(FAQ)
- 15まとめ
- 次に読む記事
- 16出典・参考
リファラル採用とは、自社の社員に知人・友人を紹介してもらい、通常と同じ基準で選考する採用手法です。紹介は候補者と出会う入口にすぎず、採否はあらかじめ定めた評価基準で判断します。紹介者との関係が採否を左右する縁故採用とは、この点が違います。転職活動をしていない層に接点を持てることと、候補者について事前に得られる情報が多いことが構造上の特徴です。
「referral」は英語で紹介・推薦を意味し、日本では社員紹介採用と呼ばれることもあります。
以下では、仕組みと他の採用手法との違い、広まっている背景、メリットとデメリット、自社に向いているかの判断までを順に扱います。個別の論点は各記事に分けてあるので、必要なところから読み進められます。
リファラル採用とは
言葉の意味と、日本での呼び方
referral は紹介・推薦を指す英語です。採用の文脈では、社員が「自社に合いそうだ」と思う知人を会社につなぐ行為と、その仕組みを指します。日本語では社員紹介採用、社員紹介制度、リファラルリクルーティングといった呼び方も使われますが、指している中身はほぼ同じです。
仕組みとしての最小構成は、次の3つです。
- 会社が「どんなポジションで、どんな人を探しているか」を社員に共有する
- 社員が知人を紹介する
- 会社が通常と同じ基準で選考し、採否を決める
紹介した社員に報酬(インセンティブ)を支払う設計が一般的ですが、報酬がなくても成立します。報酬は紹介を促す仕組みのひとつであって、リファラル採用の定義に含まれるものではありません。
縁故採用・コネ入社との違い
リファラル採用と縁故採用を分けているのは、紹介ルートではなく採否の判断基準です。候補者の適性・能力など、あらかじめ定めた基準で判断するならリファラル採用、紹介者との関係が採否を左右するなら縁故採用にあたります。
紹介経由の候補者に対して、最初にカジュアル面談を設ける、書類の確認を簡略化する、といった運用の違いはあり得ます。接点や順序が違うこと自体が問題になるわけではありません。詳しくは縁故採用との違いを扱った記事で整理しています。
つながり経由の採用そのものは、以前から一定の規模で行われてきました。厚生労働省が雇用動向調査をもとにまとめた労働市場分析レポート第41号によれば、平成25年(2013年)の入職者のうち21.8%が縁故による入職で、当時のハローワーク経由(20.1%)より多い水準でした。2013年時点の数字なので、現在の割合を示すものではありません。
両者を理解するうえでは、人のつながりをきっかけにしながら、明確な評価基準と運用ルールを設けるのがリファラル採用だと整理すると、違いがつかみやすくなります。
データで見るリファラル採用の現在地
「実際どのくらいの企業がやっているのか」は、社内提案でまず聞かれる部分です。調査によって数字が違うので、母集団とあわせて見ていきます。
矢野経済研究所が2024年10月から11月に民間企業834社の人事部門従事者を対象に行った調査では、リファラル採用の実施経験がある企業は50.1%でした。アルムナイ採用(退職者の再雇用)の38.8%を上回っています。業種別では情報通信業が68.2%、製造業が61.5%、コンサルティング業が57.8%と、専門職の採用が中心の業種で高い傾向が出ています。
一方の数字として、TalentXが公表した実施状況レポートでは、実施率が2018年の41.7%から2025年に62.5%へ、20.8ポイント上昇したとされています。制度はないが紹介実績はある企業が18.0%という数字も出ています。ただしこの調査の母集団はリファラル採用支援サービスの利用企業・問い合わせ企業2,680社なので、日本企業全体より実施率が高く出る性質があります。全体の水準を見るなら矢野経済研究所の50.1%、伸びの傾向を見るならTalentXの推移、という使い分けになります。
調査ごとに母集団が異なります。全体の水準は矢野経済研究所の50.1%、伸びの傾向と紹介経由の比率はTalentXの数値を見るのが妥当です。TalentXの母集団はリファラル採用支援サービスの関与企業なので、実施率は日本企業全体より高く出ます。
市場側の数字も動いています。同じ矢野経済研究所の調査では、リファラル採用・アルムナイ採用支援サービスの市場規模は2022年度の18億5,000万円から、2023年度に30億円(前年度比162.2%)、2024年度は50億7,000万円(同169.0%)に達する見込みとされ、2028年度には300億円と予測されています。2年で2.7倍という伸び方です。
海外では、採用ソースの上位に定着している
日本より先に定着したのは米国です。米国人材マネジメント協会(SHRM)は2017年に、社員紹介が採用ソースの1位であり続けていると報じています。記事が引用しているSilkRoadの年次レポート(2016年の採用データ、1,000社以上・1,400万件超の応募を集計)では、社員紹介が全採用の30%以上を占め、社内で完結した採用に限れば45%に達していました。
いずれも10年近く前の数字なので現在の水準ではありません。ただ、紹介が主要チャネルとして扱われる状態が海外では以前から成立していた、という位置づけの参考にはなります。日本の50.1%という実施率は、その意味では途上の段階です。
なぜ広まったのか
背景は3つに整理できます。
採用コストが企業の負担になっている
リクルート就職みらい研究所の就職白書2020によれば、2019年度の1人あたり平均採用コストは中途採用が103.3万円、新卒採用が93.6万円でした。これは2019年度の調査で、採用手法を問わない全体の平均です。現在の採用単価を示す数字ではなく、この数字から現在も上がり続けていると言うこともできません。
それでも、1人採るのに100万円前後という水準そのものが企業の負担になる、という点は変わりません。求人広告費や人材紹介の成功報酬は採用人数に比例して積み上がるため、採用が続く会社では総額が効いてきます。採用チャネル別のコスト比較は報酬相場の記事に置きました。
求人を出しても応募が来ない職種がある
エンジニアや専門職のように、そもそも転職市場に出てこない層を狙う場合、求人を出して待つ方法では届きません。すでに働いている人に個別に声をかける必要があり、社員の人脈がその経路になります。
人材の確保そのものが経営リスクになっている状況もあります。東京商工リサーチは人手不足倒産の集計を継続的に公表しています。
転職が一定の規模で起きている
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、2024年の転職入職率は9.7%でした。前年より0.7ポイント低下しており、上昇が続いているわけではありません。
この数字が示すのは、常用労働者のおよそ1割弱が1年のあいだに転職して入職しているという事実までです。個々の社員の周囲に転職経験者が何人いるかは、この統計からは分かりません。ただ、人のつながりを採用の経路として使う余地がある規模ではある、という見方はできます。
リファラル採用の仕組みと流れ
登場するのは3者です。人事・採用担当、紹介する社員、そして社員の知人(候補者)。誰が誰に何を渡すのかを先に押さえると、流れが理解しやすくなります。
④を返さないまま次の依頼をすると、紹介は静かに止まります。
実務の流れは、おおむね次のようになります。
- STEP1募集ポジションと要件を社員に共有する「エンジニア募集」ではなく、どんな経験の人を探しているかまで伝える
- STEP2社員が知人を紹介する紹介は「会って話すきっかけ」であって、採用の約束ではないと握っておく
- STEP3カジュアル面談で会う候補者が転職を決めていない段階でも会える場として置く
- STEP4通常と同じ基準で選考する接点や順序は変えてよいが、合否判断に使う評価基準は共通にする
- STEP5採否を決め、結果を伝える不採用のときは紹介者へ先に一報し、候補者へは会社から直接伝える
- STEP6報酬を支給し、紹介者に結果を返す規程で定めた条件・タイミングで支給する。結果とお礼を返さないと次の紹介が止まる
起点は、社員が「自社の雰囲気や今の募集に合いそうな人」を思い浮かべる瞬間です。そこから声のかけ方が変わります。求人票のリンクを送りつけるのではなく、「うちで一緒にやらない?」というカジュアルな一言から始まり、相手が興味を持った段階で紹介者を介して人事とつながります。
ポイントは3番目と4番目です。カジュアル面談は、候補者が転職を決めていない段階でも会える場として置きます。そこから通常の選考に入り、評価基準は他の応募者と共通にします。この順序を決めておかないと、紹介した社員が「どこまで踏み込んでいいのか」が分からず、紹介そのものが止まります。
最後の結果共有も落としたくない工程です。選考が終わったら、採否にかかわらず紹介した社員に結果を返します。次に誰を紹介すればいいかの手がかりになりますし、返してもらえない状態が続くと紹介は静かに止まります。
紹介する社員に期待される役割
社員が担うのは、候補者と会社の橋渡しです。求人票では伝わらない情報を候補者に渡し、書類では見えない情報を会社に渡す。この両方向のやり取りが、紹介経由のマッチング精度を押し上げます。
候補者に伝えてほしいのは、実際に働いている人にしか語れない次のような内容です。
- 仕事の具体的な中身と、1日の動き方
- 組織の文化や、意思決定のしかた
- 給与や勤務条件など、聞きにくい部分の実際
- 一緒に働くことになるメンバーの人柄
- 良いところだけでなく、しんどい部分
裏を返せば、会社側は社員がこれを語れる状態を作る必要があります。募集ポジションの要件、評価の考え方、条件面の目安を社員が持っていなければ、橋渡しは成立しません。
会社に渡してほしいのは、履歴書では読み取れない候補者の情報です。前職での働き方、得意なこと、どんな環境で伸びるか。ここは紹介者としての情報提供であって、採用の評価そのものではない、という線引きを保つ必要があります。
立ち上げの具体的な手順、必要な工数、誰が旗を振るかは次の記事にまとめました。

制度の型は、ひとつではない
「リファラル採用を導入する」と言っても、設計には幅があります。呼び方は便宜的なものですが、大きく3つに分かれます。
型 | どう回すか | 向いている状況 |
|---|---|---|
常設型 | 規程と報酬を整え、常に紹介を受け付ける | 採用が継続的に発生し、複数ポジションを並行して埋めたい |
期間限定型 | 「この3か月、このポジションだけ」と区切って依頼する | 特定ポジションを急ぎで埋めたい。制度化の前に試したい |
都度依頼型 | 制度を作らず、必要なときに個別に声をかける | 採用頻度が低い。まず1人採れるか確かめたい |
最初から常設型を作ると規程づくりの工数が先に立つので、私は期間限定型で1ポジション試してから常設化することを勧めています。報酬の有無も設計の変数で、報酬なしで運用している企業もあります。
他の採用手法との違い
出会い方から整理すると、求人広告は応募を待つ手法、人材紹介はエージェントからの推薦を受ける手法、ダイレクトリクルーティングは企業からスカウトを送る手法です。リファラル採用は社員の紹介、創業者・役員の人脈は特定個人のつながりが起点になります。
どの手法が優れているかは、採用したいポジションや状況で変わります。判断の材料になるのは、手法ごとの構造の違いです。
手法 | 出会い方 | 主に届く層 | 費用の発生 | 社内で必要な工数 |
|---|---|---|---|---|
リファラル採用 | 社員の紹介 | 転職を検討していない層にも届く | 採用が決まったときに紹介報酬 | 募集要件の共有と紹介者への対応が続く |
求人広告・転職サイト | 応募を待つ | 転職活動をしている層 | 掲載時に発生(採用できなくてもかかる) | 応募数に比例して増える |
人材紹介エージェント | エージェントからの推薦 | 転職活動をしている層 | 採用時に成功報酬(理論年収の一定割合) | 比較的少ない |
ダイレクトリクルーティング | 企業から個別にスカウト | データベースに登録している層 | 利用料(期間・通数)と送信の工数 | スカウトの作成と送信が続く |
創業者・役員の人脈 | 特定個人のつながり | その個人の交友範囲 | ほとんど発生しない | その個人に依存する |
副業からの正社員登用 | 実務を通じて知り合う | 副業として関われる層 | 業務委託費 | 受け入れと評価の体制が必要 |
SNSでの採用活動 | 発信への反応 | 発信が届く範囲 | ほとんど無料(運用工数がコスト) | 継続的な発信が必要 |
リファラル採用の構造上の特徴は2つです。転職活動をしていない層にも接点が作れること、そして候補者について事前に得られる情報が多いことです。実際に一緒に働いた社員の見立てが入るため、書類と面接だけでは見えない部分が判断材料になります。
裏返しもはっきりしています。母集団は社員の人脈の範囲に限られるので、求人媒体のように候補者の数を一気に増やすことはできません。紹介がいつ出るかは社員側の事情に左右されるため、期限を切って人数を確保する用途には向きません。募集要件の共有と紹介者への対応という社内工数も続きます。
どう使い分けるか
採用の目的と条件から選ぶと整理できます。
- 短期間で人数を確保したい → 求人媒体や人材紹介。母集団の量と、外部に任せられる工数が効きます
- 特定のスキルを持つ人をピンポイントで採りたい → ダイレクトリクルーティングやリファラル採用。転職活動をしていない層に届きます
- カルチャーフィットを事前に確かめたい → リファラル採用。事前情報の濃さが効きます
- 採用コストを抑えたい → リファラル採用やSNSでの発信。ただし社内工数は増えます
リファラル採用は他のチャネルを置き換えるものではありません。人数と期限が要るポジションは媒体やエージェントで動かし、要件が絞られたポジションや定着を重視したいポジションで紹介を効かせる、という併用が現実的です。採用単価の水準は報酬相場の記事で扱っています。
企業規模で変わる、リファラル採用の意味
同じ手法でも、会社の規模によって「なぜ必要なのか」がまるで違います。
スタートアップ・中小企業にとって
初期のスタートアップは、採用市場で戦うための持ち物がそろっていません。
制約 | 中身 |
|---|---|
予算がない | エージェント経由は1人あたり100万円を超えることも珍しくなく、その原資がない |
時間がない | 事業に集中していて、採用に工数を割く余裕がない |
採用の専任がいない | 経営者が兼務で、手探りで進めている |
知名度がない | 待っていても応募は来ない。優秀な人ほど、無名の会社を選ぶ理由がない |
創業メンバーの人脈が尽きる | 最初の数人は知り合いで埋まっても、そのツテは想像より早く枯れる |
育てる余裕がない | 合わない人を採っても、フォローに回す人手がない |
ないものが並ぶなかで、それでも人を採らなければ事業は伸びません。リファラル採用が効くのは、この制約の裏返しだからです。予算をかけずに始められ、社員の人脈という既にある資産を使い、知名度の不足を「知っている人からの推薦」で補える。創業メンバーの人脈が枯れる問題に対しても、紹介の担い手を社員全体に広げる形で答えを出せます。
もうひとつ、規模が小さい会社ほど採用のミスマッチが重くのしかかります。10人の会社で1人合わない人が入れば、影響は10%です。初期フェーズで求められるのは、スキルよりもむしろカルチャーフィット、当事者意識、オーナーシップ、決まっていない環境で自分で動ける力、学習の速さ、そして意思疎通のしやすさといった要素です。
このうち、書類選考や数回の面接で測りやすいのはスキルだけです。残りは、実際に一緒に働いた人の見立てがあるかどうかで精度が変わります。リファラル採用がスタートアップと相性がよい理由は、コストの安さより、この見極めにくい部分に情報が入ることだと考えています。スタートアップ固有の設計は始め方の記事で扱っています。
大企業にとって
大企業の課題は逆向きです。知名度があるので応募は集まります。困るのは、応募が多すぎて選考の工数が膨らむのに、本当に採りたい専門人材は転職市場に出てこない、という状態です。
- 専門職の採用が中心の業種で実施率が高い:矢野経済研究所の調査では、情報通信業68.2%、製造業61.5%、コンサルティング業57.8%という結果でした。ここまでが調査で確認できる事実で、各社がどの目的で選んだかは同じ調査からは読み取れません
- 採用単価の絶対額:採用人数が多いぶん、1人あたりの単価差が総額に直結します。全採用の1割を紹介経由に置き換えるだけでも、金額のインパクトは無視できない規模になります
- エンゲージメントの可視化:紹介がどの部署から出ているかは、社員が自社をどう見ているかの手がかりになります。紹介がまったく出ない部署があるなら、そこには別の課題が隠れています
- 公平性の説明責任:規程、監査、労使の説明が求められるため、制度設計の精度が中小企業より高く要求されます。基準の共通化と報酬条件の明文化は必須になります
- 組織の同質化への配慮:母数が大きいぶん、紹介が特定の部署や出身ネットワークに偏ったときの影響も大きくなります
大企業の場合、制度を作ること自体より、部門をまたいで運用を回し続ける設計が論点になります。規程の書き方は規程の作り方と雛形にまとめました。
混同されやすい言葉の整理
似た言葉が並ぶので、区別しておきます。
- アルムナイ採用:退職した元社員を再び採用すること。紹介者は不要で、対象が元社員に限られます
- ダイレクトリクルーティング:企業が候補者データベースなどから直接スカウトすること。社員の人脈は使いません
- ソーシャルリクルーティング:SNSを使った採用活動全般。社員が自社の募集をSNSで拡散する形はリファラル採用と重なります
- 縁故採用:紹介者との関係が採否に強く影響する採用。リファラル採用とは採否基準の扱いが違います
メリットは3つの視点で見る
メリットは、会社・紹介する社員・候補者のどこから見るかで変わります。ここでは概観だけ挙げます。
会社側は、採用単価を抑えられること、転職市場に出てこない層に届くこと、入社後の定着が期待できることです。紹介経由の入社者について離職確率が低いことを示した研究もあります。示されているのは離職のしにくさで、能力や採用の質そのものを示した結果ではない点は押さえておきたいところです。
紹介する社員には報酬が入り、自分が働く環境を言葉にする機会にもなります。候補者は、求人票では分からない実際の働き方を、知人から先に聞ける状態で選考に入れます。
3視点それぞれの詳細と、実企業の事例は次の記事にまとめました。

どこまで成果が出るものなのか
「導入したら何割くらい紹介で採れるのか」は、社内提案で必ず問われます。TalentXのレポートでは、20%を超える企業が中途採用人数の1割以上をリファラル採用経由で獲得しているとされています。母集団に支援サービスの関与企業が含まれる点は差し引いて読む必要があります。
成果を見るときは、採用人数だけを追わないほうが判断しやすくなります。紹介が生まれているか、紹介から採用につながっているか、入社した人が定着しているか。この3つを分けて見ると、どこで詰まっているかが見えます。指標の設計や運用の回し方は4つの壁の記事で扱っています。
デメリットと、つまずきやすいところ
導入して失速するパターンには型があります。よくあるのは、制度を作って告知したあと紹介が出てこなくなる、報酬だけ上げて空回りする、不採用が出たときに気まずくなって紹介が止まる、といった流れです。
不採用の場面は特に懸念されています。エン・ジャパンが501社に行った調査では、リファラル採用の懸念の1位が「不採用による、紹介した社員と応募者の関係悪化」で53%でした。ここは紹介を依頼する時点での期待値合わせと、伝える順序で対処します。
- リスクとデメリットの検証 → 7つのリスクと対策
- 続かない・形骸化する構造 → 4つの壁と運用
- 不採用の伝え方と文面 → 紹介者と気まずくならない伝え方
報酬はどう考えるか
報酬は制度の中心のように見えて、実際は運用の一部です。金額を上げれば紹介が増えるわけではなく、むしろ高額な報酬は「お金のために友人を連れてきた」という見え方を生むことがあります。
決めるべきは、対象者・金額・支給条件・支給タイミングの4点です。そして規程に書いて、制度の対象者が読める場所に置きます。金額を非公開にして個別に判断する運用は、社内の不公平感につながります。
支払い方には法務上の論点もあります。社外の第三者へ継続的に紹介報酬を支払う制度を設ける場合などは、職業安定法上の扱いを含めて専門家に確認してください。税務上の取り扱いも、給与として払うか一時金として払うかで変わります。

- 紹介されたら採用することになる
- 報酬を上げれば紹介は集まる
- 大企業向けの手法だ
- 制度を作れば、あとは勝手に回る
- 紹介は入口で、採否は定めた基準で決める
- 紹介が出るかは、社員が自社を勧められる状態かで決まる
- 従業員規模による採用実績の差は目立たない
- 募集情報の共有と依頼を続ける運用が要る
「紹介されたら採用する」という理解は、制度を縁故採用に寄せてしまいます。紹介は出会うきっかけで、採否は基準で決めます。
「報酬を出せば紹介が集まる」も外れやすい前提です。紹介が出るかどうかは、社員が自社を人に勧められる状態かどうか、そして今どのポジションを探しているかが伝わっているかで決まります。報酬はそれを後押しする役割です。
「大企業向けの手法」という思い込みもあります。TalentXのレポートでは、100名未満の企業と1,000名以上の企業で採用実績に目立った差はないとされています。
向いている会社・向いていない会社
すべての会社に等しく効く手法ではありません。
- 社員が自社の仕事や環境に納得している
- 採用したいポジションと要件が言葉になっている
- 経営陣や現場が候補者と直接会える
- 採用が継続的に発生している
- 離職が続いていて、社内の納得感が低い
- 求める人物像が「優秀な人」のままで固まっていない
- 選考の評価基準が人によって変わる
- 紹介を受けても選考を回す体制がない
向いていない状態にあるなら、先に手を入れるべきものがあります。社員のエンゲージメントが低い状態、言い換えれば自社を知人に勧められない状態で紹介を依頼しても、紹介は出てきません。紹介数は、エンゲージメントの計測値としても読めます。
始められる状態か、確かめる
制度を作れるかどうかより、紹介が続けて生まれる土台があるかどうかが分かれ目になります。
- 募集ポジションと求める人物像を、社員に説明できる
- 紹介された候補者へ、数営業日以内に反応できる
- 紹介してくれた社員へ、結果とお礼を返せる
- 社員が友人に、良い点だけでなく実態も話せる
- 担当者が1人、継続して制度を見られる
制度を作れるかどうかより、この5項目が埋まっているかで紹介が続くかが変わります。
埋まっていない項目があるなら、そこを先に整えるほうが早くなります。
採用選考そのものの公正性についても、厚生労働省が公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重すること、適性・能力に基づいた基準で選考することを示しています。紹介経由でもこの考え方は変わりません。
よくある質問(FAQ)
Q. リファラル採用とは何ですか?
社員に知人・友人を紹介してもらい、通常と同じ基準で選考する採用手法です。紹介は入口で、採否は定めた評価基準で判断します。
Q. 縁故採用とどう違いますか?
採否を何で決めるかが違います。定めた基準で判断するならリファラル採用、紹介者との関係が採否を左右するなら縁故採用です。
Q. どのくらいの企業が実施していますか?
矢野経済研究所が2024年に834社に行った調査では、実施経験のある企業が50.1%でした。
Q. 報酬は必ず必要ですか?
必須ではありません。報酬なしで運用している企業もあります。設けるなら対象者・金額・支給条件を規程で統一してください。
Q. 中小企業やスタートアップでも成立しますか?
成立します。TalentXのレポートでは、100名未満と1,000名以上で採用実績に目立った差はないとされています。
Q. 紹介された人を不採用にしてもよいのですか?
問題ありません。不採用が起こり得ることを紹介の時点で共有しておくほうが、あとの気まずさを防げます。
Q. 社員が前職の同僚を紹介するのは引き抜きになりますか?
通常の転職打診なら多くの場合は問題になりません。ただし複数名の同時勧誘やキーパーソンの勧誘は違法と評価される余地があるので、該当しそうなら弁護士に確認してください。
Q. リファラル採用だけに頼っても大丈夫ですか?
母集団が社員の人脈の範囲に限られるので、他のチャネルとの併用が現実的です。
Q. アルムナイ採用とは何が違いますか?
アルムナイ採用は退職した元社員を再び採用することで、対象が元社員に限られます。紹介者を介さない点も違います。
Q. 何から始めればよいですか?
目的を決め、募集ポジションと要件を言葉にしてから、紹介の手順と報酬条件を決めます。始め方の記事に8ステップで書きました。
まとめ
リファラル採用を分けているのは、採否を何で決めるかです。紹介は入口で、判断は定めた基準で行う。ここが縁故採用との境界線になります。
他のチャネルを置き換える手法ではありません。転職活動をしていない層に届き、候補者の事前情報が濃い。その代わり、母集団は社員の人脈の範囲に限られ、社内の工数も続きます。人数と期限が要るポジションは媒体やエージェントで動かし、要件が絞られたポジションで紹介を効かせる、という使い分けが現実的です。
次に読む記事
次にやりたいこと | 読む記事 |
|---|---|
導入するか判断したい | |
具体的に立ち上げたい | |
報酬の金額を決めたい | |
制度・規程を整えたい | |
法務・税務を確認したい | |
続かない原因を潰したい | |
縁故との違いを説明したい |
出典・参考
- 矢野経済研究所「リファラル採用・アルムナイ採用支援サービス市場に関する調査(2025年)」(調査期間2024年10〜12月/法人アンケートは2024年10〜11月・834社)
- TalentX Lab.「【2025年版】リファラル採用の実施状況に関する企業規模・業界別統計レポート」(対象2,680社・MyRefer利用および問い合わせ企業)
- リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」(2019年度の1人あたり平均採用コスト)
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」(2024年の入職率・転職入職率)
- 厚生労働省「労働市場分析レポート第41号 入職者の入職経路に関する分析」(平成26年9月/数値は平成25年)
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
- 職業安定法(e-Gov法令検索)
- エン・ジャパン「人事のミカタ アンケート第127回(501社)」
- 東京商工リサーチ「人手不足倒産の集計」
- SHRM「Employee Referrals Remain Top Source for Hires」(2017年6月/SilkRoad「Sources of Hire」2016年データを引用)
- Burks, Cowgill, Hoffman, Housman「The Value of Hiring through Employee Referrals」Quarterly Journal of Economics, 2015

