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リファラル採用の導入事例5社|富士通・Stripeなどの公開情報から運用の工夫を読み解く

事例・データ
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リファラル採用の事例を探すと、「成功事例20選」のような記事が並びます。ただ、社名と一言の紹介が並んでいるだけでは、自社で何をすればいいのかは分かりません。

事例から持ち帰れるのは、制度の形そのものではなく、公開されている運用の工夫を、自社の課題に照らして選ぶという読み方です。同じ「リファラル採用を導入した」でも、社員に制度が知られていない会社と、不採用時の対応に不安がある会社では、参考にすべき箇所が変わります。

この記事では、各社が公開している情報をもとに5社の取り組みを整理し、参考になる運用テーマごとに並べました。数字はすべて出典と年次を添えています。なお、私たちは各社に取材をしていません。各社が社内でどんな課題を抱えていたかは公開情報からは分からないため、確認できる施策と、そこからRiffy編集部が自社への応用として考えたことを、記事の中で分けて書いています。

リファラル採用そのものの仕組みや、他の採用手法との違いから知りたい場合は、こちらが入口になります。

あわせて読みたいリファラル採用とは?仕組み・他手法との違い・企業規模別の意味まで【基礎ガイド】

リファラル採用を実施したことがある企業はどのくらいか

事例に入る前に、前提となる数字を確認しておきます。

矢野経済研究所が2024年10月から11月に民間企業834社の人事部門従事者を対象に行った調査では、この調査に回答した企業の50.1%に実施経験がありました。業種別では情報通信業68.2%、製造業61.5%、コンサルティング業57.8%という結果です。

これは回答企業834社のなかでの割合で、日本企業全体の数字ではありません。また「実施したことがある」割合なので、現在も続けているかどうかは別の話です。以下で見る5社は、いずれも運用の工夫を公開しています。

事例の読み方

先に、この記事の見方を書いておきます。

5社を並べると、やっていることはバラバラに見えます。報酬を出す会社もあれば、出さない会社もあります。全社一斉に始めた会社もあれば、一部門のトライアルから広げた会社もあります。

各社がどんな課題を抱えていたのかは、公開情報からは分かりません。この記事で整理しているのは、公開されている施策から読み取れる運用テーマです。自社の状況に近いテーマの事例から読むと、持ち帰れるものが見つかりやすくなります。

会社

参考になる運用テーマ

公開されている数字

出典の性質

富士通

大企業での段階導入と社内浸透

2018年開始・初年度約20名→直近80名超・累計300名超

支援サービス提供元の事例記事+媒体取材+自社の制度ページ

Stripe

金銭報酬に頼らない紹介文化

紹介経由の採用が2014年43.6%→2016年36.8%

採用管理システム提供元の記事

メルカリ

紹介と選考を分ける考え方

数字の公開はなし

自社オウンドメディア

SmartHR

不採用時の紹介者・候補者へのケア

数字の公開はなし

自社note+媒体記事

freee

採用結果だけでなく紹介行動を称える文化

数字の公開はなし

媒体の事例記事

数字を公開していない会社もあります。数字がないから成果が出ていない、という意味ではありません。公開する範囲は会社の方針によります。

事例1:富士通 — 大企業での段階導入と社内浸透

公開情報から確認できること

HRプロの取材記事によれば、富士通は2017年下期に数百人規模でトライアルを実施し、問題点を検証したうえで2018年4月に正式導入しました。社内への浸透策としては、人事部門のトップから全社員へメッセージを配信し、イントラネットにリファラル採用の専用ページを作ったことが紹介されています。

その後の推移が公開されています。

富士通のリファラル採用:初年度から数年間の推移
2018
数百人規模のトライアルを経て正式導入
約20
初年度の採用数
80名超
直近の年間採用数
300名超
累計の採用数

出典:TalentX Lab.が公開している富士通の導入事例記事(2025年11月更新)。リファラル採用支援サービスの提供元が公開している事例記事であり、第三者による検証を経たものではありません。導入の経緯はHRプロの取材記事によります。

リファラル採用支援サービスを提供するTalentXが公開している導入事例記事によれば、初年度の採用は約20名、翌年は約40名、直近では80名を超え、累計では300名を突破したとされています。内定承諾率は9割以上、入社後のアンケートでは「入社前後のギャップが少なかった」という回答が多く、リファラル経由で入社した社員のエンゲージメントは全社員平均より高いとも書かれています。

この数字はサービス提供元が公開している事例記事に基づくもので、第三者による検証を経たものではありません。数字を読むうえで参考になるのは、初年度約20名から、その後数年かけて規模が拡大しているという時間軸です。

富士通はリファラル採用制度をキャリア採用の入口のひとつとして公開しています。

編集部の見方:全社展開の前にトライアル期間を置く進め方と、人事部門のトップから全社員へメッセージを配信するという社内発信のしかたは、自社で制度を立ち上げるときの検討材料になります。ただし数万人規模の会社での進め方なので、そのまま自社に当てはまるとは限りません。

事例2:Stripe — 金銭報酬に頼らない紹介文化

「報酬を出さないと紹介は集まらないのでは」という問いを考えるうえで、参考になる事例です。

決済サービスを提供するStripeは、紹介に金銭報酬を出していません。それでも紹介経由の採用が全体の4割前後を占めていた時期があります。採用管理システムを提供するGreenhouseが公開している記事によれば、紹介経由の比率は2014年に43.6%、2015年に38.9%、2016年に36.8%でした。組織の拡大とともに少しずつ下がっています。

仕組みとして特徴的なのは2つです。

ひとつは、入社した瞬間から紹介できる状態を作っていること。新入社員は入社時に「Spin Up Session」に招かれ、各部門が何をしていて、いまどのポジションを募集しているかを学びます。同時に採用管理システムのアカウントが用意され、紹介の導線がその場でつながります。

もうひとつは、紹介の質を区別していること。同社は「本当によく知っていて、責任を持って推薦できる候補者」を strong referral と定義していたとされています。この場合、紹介者が面接後の振り返りの場に同席して候補者についての質問に答えたり、経営メンバーが候補者のガイド役を務めたりする対応があったと記事には書かれています。紹介者が合否そのものを判断する立場に立つ、という記述ではありません。

編集部の見方:報酬の金額を検討する前に、社員が募集ポジションを知っている状態になっているかを確認する材料になります。何を探しているか知らなければ、紹介したくても紹介できません。報酬の設計は報酬相場の記事にまとめています。

なお、これは米国企業の運用です。紹介者が選考の場に関わる形を自社で取り入れるなら、評価プロセスや公平性との整合を確認したうえで設計してください。紹介者と選考の距離の取り方は縁故採用との違いの記事で扱っています。

数字は2014年から2016年のもので、現在の水準を示すものではありません。

事例3:メルカリ — 紹介と選考を分ける考え方

公開情報から確認できること

メルカリが運営するオウンドメディア「メルカン」の記事(2021年9月公開)に、社員紹介で入社した社員と紹介した社員の対談が掲載されています。当事者の言葉として出てくるのは、紹介料が入るのは紹介した側だけで紹介された側には支払われないこと、紹介から面接を受けるまでと面接を通過するまでを別の段階として捉えていること、スキルと同時にカルチャーマッチを見ていることです。

編集部の見方:紹介されたことと選考を通過することは別、という前提が当事者の言葉で語られている点が参考になります。この前提を社内でどう共有するかは、不採用時の受け止め方に関わってきます。伝え方は不採用の伝え方の記事で扱っています。

事例4:SmartHR — 不採用時の紹介者・候補者へのケア

不採用の場面は、多くの企業が懸念しているところです。エン・ジャパンが501社に行った調査では、リファラル採用の懸念の1位が「不採用による、紹介した社員と応募者の関係悪化」で53%でした。

公開情報から確認できること

アカリクがSmartHRの取り組みとして紹介している記事によれば、紹介した候補者が不採用になったとき、紹介者と候補者の会食を会社負担でセッティングする「ごめんねごはん」という仕組みがあるとされています。

同社は採用noteでも、リファラル経由で入社した社員と紹介した社員の双方に取材した連載を公開しています。紹介した側の視点入社した側の視点が、それぞれ本人の言葉で読める形になっています。

編集部の見方:不採用になったあとに紹介者へ何を返すかを、あらかじめ決めておくという設計が参考になります。会食である必要はありません。結果を先に伝える、お礼を言葉にする、評価には関係しないと明言する。この範囲でも設計できます。

事例5:freee — 採用結果だけでなく紹介行動を称える文化

公開情報から確認できること

Wantedlyが公開している事例記事では、freeeが採否の結果にかかわらず、紹介という行動そのものを称える文化を作っている点が紹介されています。

編集部の見方:称賛の対象を「採用できたこと」ではなく「紹介してくれたこと」に置く設計です。採用の成否は候補者と会社の相性にも左右され、紹介者が決められる部分ではありません。紹介者が動かせない結果を称賛の条件にしない、という考え方は検討材料になります。

5社の公開事例から見えた3つの運用テーマ

5社すべてに共通する法則があるわけではありません。公開情報から確認できる範囲で、複数の会社に共通して見えたテーマが3つあります。

公開事例から見えた3つの運用テーマ
  • 社員が「誰を探しているか」を知る仕組み(富士通・Stripe)
  • 紹介者の体験を採用結果だけで評価しない(SmartHR・freee)
  • 紹介と選考を分ける(メルカリ・Stripe)

5社すべてに共通する法則ではなく、公開情報から複数社で確認できたテーマです。制度の形は各社で違います。

1. 社員が「誰を探しているか」を知る仕組み(富士通、Stripe)

Stripeは入社時のSpin Up Sessionで各部門の募集ポジションを伝え、採用管理システムのアカウントをその場で用意しています。富士通はイントラネットの専用ページと、人事部門トップからの全社メッセージで周知しました。手段は違いますが、社員が募集内容を知る導線が設計されています。

2. 紹介者の体験を採用結果だけで評価しない(SmartHR、freee)

SmartHRは不採用になった場面でのケアを、freeeは採否によらず紹介行動を称える文化を公開しています。紹介者に返るものが、採用が決まったときの報酬だけではない、という設計です。

3. 紹介と選考を分ける(メルカリ、Stripe)

メルカリは当事者の対談で、紹介と選考通過を別の段階として捉える見方を公開しています。Stripeも紹介の質を区別したうえで、選考のプロセス自体は動かしていません。紹介を入口として扱い、判断は選考で行うという整理です。

自社ならどの事例を見るか

自社の状況に近いところから読むと、持ち帰れるものが見つかりやすくなります。

自社の状態

参考にする事例

見るポイント

社員に制度が知られていない

富士通

段階導入と社内発信のしかた

募集職種を社員が把握していない

Stripe

募集情報を社員へ共有する仕組み

報酬を上げるか迷っている

Stripe

金銭報酬に頼らない運用

不採用後の関係悪化が心配

SmartHR

不採用時の紹介者・候補者へのケア

採用が決まった紹介しか称えていない

freee

紹介行動そのものへの称賛

紹介=採用確約だと思われそう

メルカリ

紹介と選考の切り分け

成果の見方について:紹介を始めたあと、採用人数だけで短期間に成否を判断すると、途中の変化が見えません。紹介数、紹介してくれた社員の人数、面談まで進んだ数といった手前の動きもあわせて確認すると、どこで止まっているかが分かります。富士通の事例では初年度約20名から、その後数年かけて規模が拡大しています。

具体的な立ち上げ手順は次の記事にまとめました。

あわせて読みたいリファラル採用の始め方|スタートアップがゼロから立ち上げる8ステップと工数・スケジュール

制度が回り始めたあとに詰まる場所は、4つの壁の記事で扱っています。規程に落とす段階になったら規程の作り方と雛形を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 大企業でないとリファラル採用は成功しませんか?
規模は条件ではありません。富士通のような大企業も、Stripeのような当時のスタートアップも公開事例があります。社員数が少ないほうが、経営陣が候補者と直接会いやすいという利点もあります。

Q. 報酬を出さないと紹介は集まりませんか?
Stripeは金銭報酬なしで、紹介経由の採用が4割前後を占めていた時期があります。報酬より先に、募集ポジションが社員に伝わっているかを確認してください。

Q. 導入して何年で成果が出ますか?
一律の目安はありません。公開されている事例では、富士通が初年度約20名から、その後数年かけて80名超まで規模を拡大したとされています。採用人数だけで短期間に判断せず、紹介数や面談数といった手前の動きもあわせて見てください。

Q. 事例に出てくる数字は信用できますか?
出典の性質によります。この記事では、自社が公開しているもの、媒体の取材によるもの、支援サービス提供元が公開している事例記事を区別して書きました。特に最後のものは第三者の検証を経ていない点に注意してください。

Q. 中小企業の事例が少ないのはなぜですか?
今回は、取り組み内容と出典を確認できる公開事例を優先したため、大手・成長企業が中心になっています。企業規模別の成功率を比較する記事ではありません。

Q. 他社の制度をそのまま真似してよいですか?
制度の形をコピーするより、自社の課題に近い事例から施策を選ぶほうが現実的です。自社の状況が違えば、同じ施策でも同じようには働きません。

まとめ

5社の公開事例から見えたのは、社員が募集内容を知る仕組み、紹介者の体験を採用結果だけで評価しない設計、そして紹介と選考を分ける整理の3つでした。すべての会社に共通する法則ではなく、複数社で確認できたテーマとしての整理です。

制度の形は各社で違います。報酬を出す会社も出さない会社もあり、全社一斉に始めた会社も一部門から広げた会社もあります。他社の制度を丸ごと持ってくるのではなく、自社の課題に近い事例から施策を選ぶ。この記事はその引き当てに使ってください。

リファラル採用の全体像は基礎ガイドに、メリットとデメリットの判断材料は3視点の総まとめにまとめてあります。

出典・参考

伊藤 駿

執筆

伊藤 駿株式会社Filants(Riffy運営)代表取締役

株式会社Wunderbar(Skettt運営)の取締役として、シード〜シリーズA期の5年半、事業・プロダクト・組織・採用を横断してリードしてきました。その中で、国内外で計15名をリファラル採用で採用。0→1・1→10フェーズの採用と組織づくりの実務、そして生成AIを前提とした開発・業務構築の知見をもとに、現場で本当に使えるリファラル採用の実践知をお届けします。

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